Signature Designer of the Month | vol.4 | Allen Shakir & Ewa Bryzek

Allen Shakir & Ewa Bryzek ▲ 日本を訪れた際に撮影した1枚。2人にとって日本は多様な刺激を受けられる特別な場所。

Signature Designer = LOGAN atelierのトレードマークとして、また一人の人間としても尊敬できるデザイナー個人をピックアップして皆さんにご紹介していく特集です。デザイナー/作り手の人となりを知り、普段お店には並ぶことのないデザイン細部に至るまでの想いを理解し、「ものづくり」への愛を感じて頂く事で、皆さんが少しでも彼らのデザインを長く愛用するきっかけの一助となるように始めた企画です。

Vol.4でご紹介するのは、デンマークの『Allen Shakir(アレン・シャキール)とEwa Bryzek(エワ・ブリゼク)』さんです。インタビューには主にAllenさんが応えてくれました。彼らの代名詞といえば受賞歴もあるTwist Shelfでしょうか。稀に見るシンプル且つ革新的なソリューションに愕然としたのを覚えています。Delta ClockやArc Pendantとヒットを連発するLAWA DESIGN。今後の活動も目が離せません。

世界一幸せな国ともいわれるデンマークに根付くライフスタイル「Hygge(ヒュッゲ)」。物理的に恵まれた暮らしではなく、精神的な豊かさを大事に、自分らしくシンプルに暮らす考え方です。AllenさんとEwaさんのインタビューを通して、言葉の端々にこのHyggeの考えがうかがえました。正直なところHyggeについて聞いたことはあるものの詳しく調べたことがなかったのですが、会話を通して理解が深まるにつれて彼らの製品にあふれている機能美がどのようにして生まれたのか納得させられました。




——まずはAllenさんとEwaさんお二人について詳しく。それと建築家だった過去は以前伺っていますが、どういった経緯でプロダクトデザインの分野へ足を踏み入れ、LAWAを立ち上げるに至ったのかについてお話を聞かせてください。

LAWA DESIGNは、もともと建築家だった2人(Allen ShakirとEwa Bryzek)で設立したデンマーク拠点のデザインスタジオです。

私(Allen)の生まれはブルガリアで、デンマークで育ちました。現在は32歳です。子供の頃から絵を描いたり、物語を書いたり、映画を作ってみたりと創作意欲の強い子でしたね。成人してからは建築学に情熱が一気に傾いて没頭して。その時にEwaに初めて会ったんです。ちなみに2012年ころから建築家として実地経験を積んでいました。

Ewaはポーランド生まれの31歳。そもそもは建築専攻の学生インターンシップで半期だけデンマークに来ることになっていたのですが、その時に私と出会って卒業後もデンマークに残ることに決めてくれました。それで現在は2人でコペンハーゲンのアパートで暮らしています。

LAWAとしての物語は5年前に趣味で始めたプロジェクトがきっかけになっています。リビングに照明が欲しかったんです。最初からこんな照明が欲しいなというデザインも特になかったのですが、漠然とですがなにかしら特別なデザインであって欲しくて(笑)。しばらくのあいだずっと探していたんですが結局ピンとくるものが見つからず、なんとなく自分でスケッチしてみようかなと。次々にスケッチ画をかいていると今度はEwaも一緒になってデザインし始めて。それで3Dモデルをつくったり、プロトタイプを作成したりどんどん話が進んでいって。あーでもない、こーでもないとやっているうちに、「あ、これだ」と。そうして出来上がったのがArc Pendantなんです。随分と遠回りして時間がかかってしまいましたが、結果的にアイデアをスケッチから実際の製品に落とし込むまでのプロセスがとても刺激的で学びも多くて、なによりも楽しかったんです。

そうして次に、光と影とで遊ぶミニマルな壁時計Delta Clockをデザインして、昨年、私たちの最新作であるTwist Shelfを発表しました。単純なひねりから創造されたシェルフと磁気ボードの機能性をもった、2-in-1の製品です。




——面白いですね。自分自身でDIYされたりする方も多いですが、実際に製品化までこぎつけるあたりがさすがです。LAWAのデザインはお二人自身が本当に欲しいと感じたものを具現化されているからこそ妙に説得力があるわけですね。
ご出身はブルガリアとポーランド。そこにデンマークの知恵と自然があわさって製品が誕生していくのですね。そんなお二人だからこそ伺いたい。ずばりデンマークとはどの様な国ですか?


▲ 左)コペンハーゲンを代表するニューハウン。運河に沿って、カラフルな木造家屋がズラリと軒を並べるエリア。中央上)実は自転車大国のデンマーク。街並みと絶妙にマッチし景観の一部に。右)アンデルセンの童話と言えば、ということで人魚姫の銅像

デンマークは人口わずか500万人の、ヨーロッパにある小さな国です。ですが、なかにはお気付きでない方もいらっしゃるかもしれないですが、デンマークには世界に誇る素晴らしい文化が実は数多くあります - レゴ、バイキング、デンマークデザイン、自転車文化、おいしいペストリー、「人魚姫」・「みにくいアヒルの子」・「マッチ売りの少女」などで有名な童話作家のアンデルセン。それと「Hygge(ヒュッゲ)」もご存知ですか?温もり、心地よい雰囲気や空間、幸福感に満ちている状態を表す言葉で、デンマークのライフスタイルについて描写する際にこう呼んだりします。この様に素晴らしい側面が沢山あるデンマークですが、ただ天気だけはどうにもならないですね(笑)。




——「Hygge(ヒュッゲ)」。シンプルで豊かなくらし。言わば北欧デザインの原点ですよね。そうなると気になってくるのが休日の過ごし方。比較的ゆったりとした時間を過ごされているのですかね?

時間があれば、世界を旅して探索しています(笑)。 この旅が、おそらく私たちの中では最大のインスピレーションの源です。日本も私たちの大好きな旅行先の一つですよ。建築物、食べ物、自然の美しさに関しては、比類のないものです。そして、日本の皆さんは本当に親切にしてくれます!

普段の週末は、お互いに家族や友人と時間を過ごすようにしています。そのほかには公園を散歩したり、街を探索したり、映画を見たりするのが好きですね。

最近でいえば、アパートをリノベーションして、好きな様に作り替えています。キッチン、バスルーム、それと収納スペースも新たに設計しました。アイデアが実現していくことは、いつみてもエキサイティングです。

▲ 左)原宿竹下通りに立つEwa。中央)うさぎ島とも呼ばれる大久野島での1枚。右)奈良といえば鹿




——必ずしもゆったりと時間を過ごすことが「Hygge(ヒュッゲ)」なのではく。大切なのは、安心して自分らしくいられる人たちとともに過ごすことだと。なんとも奥が深い。日本にも何度も訪れていただいているみたいですね。トップの写真も日本で撮影されたものですが。次回いらっしゃった際には是非とも直接お会いしたいですね。
元々幼少期からデザインを好んでいたお二人ですが、そもそも建築家(デザイナー)を目指そうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。


人々に喜びをもたらす何かをゼロから作り上げていく事ほどに充実したものは世の中にないと思います。デザイナーという職種はまさにそれをすることができるんです。また毎日が変化に富んでいて、絶えず新しいことを学んで、自分自身を成長もさせてくれる職業です。一生退屈しませんよ!

写真 写真 ▲ Arc Pendantのプロトタイプと出展時のブース設営の様子。




——普段デザインされる際にはどのようなアプローチをとられていますか?

スケール感やプロセスは全くの別物ですが、構造体であったり幾何学的な観点から建築家としての経験が目に見える格好でしっかりと活かされています。

建造物は実際に作り上げられるまでに場合によっては数年待たなければなりませんが、プロダクトは早ければ数時間でプロトタイプが作れてしまいますしね。時間の有効活用もできますよ(笑)。

LAWAとしては既に世の中に存在するデザインには直接影響されないようにして、代わりに独自のスタイルを確立しようと試みています。新しい製品を設計するときには、常にどうしたら新しいソリューションを生み出せるのかを自問しています。

私たちのインスピレーションの多くは、経験であったり感情であったりと、デザインとはあまり関係のないところからきていますね。




——LAWA DESIGNのデザインモットーを教えてください。

新しいアイデアを思いついたときには、「これって自分の家にないよね?」といつも確認しています。無意識的に普段目にするオブジェクトを模してしまっている場合がありますからね。そこで回答がNOの場合にのみ、そのアイデアを突き詰めていきます。

LAWAには3つの設計原則があります。
“潔さ:可能な限りにシンプルで、デザインの細部に至るまですべてに理由があること”
“実用性:役に立たないのであれば、それは無能である”
“遊び心がある:wow(わぉ!)な要素がある”
これらすべてを組み合わせる事で、素晴らしいデザインが生まれると信じています。


——まさにですね。LAWAのデザインと照らし合わせると本当に納得します。
この質問は毎回させて頂いているのですが、デンマークらしいデザインとはどういったものだと考えますか?


私たちにとってデンマークのデザインとは、自然の素材を用いて、細部まで徹底的にこだわりぬき、実用的でありながらミニマルな作品でしょうか。デンマークのデザインと日本のデザインには類似点がありますよね。皆さんにとって、私たちのデザインの中に同じ“美”を感じて頂けたらと願っています。




——こうなってくるとLAWAの次のデザインが気になってきます。現在動いているプロジェクトについて可能な限りで構いませんので特別に教えて頂けませんか。

今はデスク周り向けに、そのモノ自体もコンパクトに出来る収納を考えています。今お伝え出来るのはこれだけですかね。乞うご期待ください。




——これはもしかするとご自宅をリノベーションされた際にインスピレーションがふってきたのでしょうか??とても気になるところです。楽しみに待ちたいと思います。では、最後に。日本の皆さんに一言ありましたらお願いします。

日本の皆さんが私たちのデザインの中に、潔さと実用性、そして遊び心を感じて頂けることを心から願っています。きっとそれらは皆さんの日常に何かしらの刺激を与えてくれると信じています。

Twist Shelf Delta Clock ▲ 左)向かって左は棚として、右は磁器ボードとして使えるTwist Shelf。右)Delta Clockのカラーバリエーション。 *クリックで各製品ページへ






写真 Allen Shakir(左)とEwa Bryzek(右)
家具・プロダクトデザイナー
Allenはブルガリア、Ewaはポーランド出身。お互いに建築家として活躍後に共同でLAWAを設立。”潔さ”、”実用性”、”遊び心”をモットーに、デンマークの風土・文化を取り入れたデザインに定評あり。
Arc PendantでELLE Decoration Polska’s design competition for young talents 2015を受賞。デザイナーとしてもDanish Entrepreneurship Award 2015でノミネートされ、各種デザイン雑誌にて特集が組まれるほど今後が期待される注目のデザイナー。

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