Signature Designer of the Month | vol.8 | Jihoon Oh

ジフン・オ

Signature Designer = LOGAN atelierのトレードマークとして、また一人の人間としても尊敬できるデザイナー個人をピックアップして皆さんにご紹介していく特集です。デザイナー/作り手の人となりを知り、普段お店には並ぶことのないデザイン細部に至るまでの想いを理解し、「ものづくり」への愛を感じて頂く事で、皆さんが少しでも彼らのデザインを長く愛用するきっかけの一助となるように始めた企画です。

Vol.8は、細部と調和を軸に哲学的なアプローチで美的デザインを構築する韓国atelier Oのデザイナー『Jihoon Oh(ジフン・オ)』さんです。

とても落ち着いていて物腰柔らかな人格者。建築学やデザイン学はもちろんのこと、哲学やクラシック音楽とジャンルを問わず幅広く興味を広げていらっしゃいます。LOGAN atelierでも大切にしています「ものづくり」という観点で非常に共感する部分も多く、また論理的なデザインアプローチには学ぶべき点が多々あります。

日本のデザインに影響を受けているデザイナーさんはこちらで取り上げさせていただいた方々含め大勢いらっしゃいますが、さすが近隣国ということもあってか彼の考え方や作品には日本人の感性に通ずるものを皆さんにも感じて頂けるかと思います。




——まずは自己紹介をお願いします。

大学では建築デザインを専攻、インテリアデザインや家具にも幅広く興味があります。加えてアートや音楽、哲学なども好きですが、これらはすべてディテール、シンプルさ、そして調和に基づいているからだと思っています。

シンプルを誇示するようなあからさまなものよりも、ディテールに隠されたシンプルを好み、またそれら全体のバランスに調和がとれていることが好ましいです。普段の生活の中でこの調和がとれているデザイン/建築に出会うと気分があがりますね。




——あなたの国(韓国)について教えてください。

▲ 左から時計回りに)お気に入りのソウルハニャン都城から眺める景色、伝統的な家屋が立ち並ぶ北村韓屋村、高層ビルがそびえ立つビジネス街にある徳寿宮、ソウルの街並み、多くの文化財や国立古宮博物館が並ぶ景福宮

いま私は韓国のソウルに住んでいます。東京に似た大都市で、とても繁雑で、日々毎日が忙しなく過ぎていきます。このダイナミックな環境だからこそ、敢えてゆったりとリラックスして、意図的に自然の中で時間を過ごすようにしています。それ故に朝鮮王朝の都・漢陽(ハニャン)を取り囲む城郭であるソウルハニャン都城がとても気に入っています。なによりソウルの美しさが一目で分かりますし、美しい山々と街の文明が共存しているこの素晴らしい価値を改めて見つめ直すことができる場所です。




——週末の過ごし方について教えてください。

近年はクラシック音楽に興味を持っています。特にピアノのメロディーがとても心地よいですね。時には公演を見に行きますが、自宅で過ごすことがほとんどです。ですので私にとって自宅は非常に重要な位置づけなんです。

それと最近では、1970年代から90年代にかけてのBang & Olufsen(バング&オルフセン)のビンテージオーディオを収集しています。ヤコブ・イェンセンの美しいデザインを鑑賞しながら、これらの作品にふさわしい家具や空間を想像するのもまた楽しい時間です。




——ブランド名の由来は?

ブランド名の由来はとてもシンプルです。ブランドイメージを、繊細で建築的なディテールを備えたユニークな家具ブランドにしたかったのです。そのためには職人の技が必要不可欠で、そのための適切な場所は「アトリエ/工房(= atelier)」でした。そして「O」は私の名前「Oh」からとって'atelier O'となりました。




——デザイナーになろうと決めたきっかけを教えてください。

デザイナーであることは私にとってとても自然なことでした。建築家になることは幼い頃からの夢でした。そしてパートナー達と共に建築事務所を開いた後に、インテリアデザインや家具など様々な分野にも興味を持ちました。デザイナーになるぞという想いよりもむしろ、自分が頭の中で考えているものを具現化してカタチにしたいという純粋な思いの方が大きかったと思います。自分の好きなことや興味のあることを表現していくなかで、今現在取り組んでいる事に繋がっているのだと思います。

スタジオ スタジオ ▲ Jihoonさんのアトリエでの様子




——あなたに影響を与えたデザイナーはいらっしゃいますか?

多くの建築家、哲学者、デザイナーがいつも私に影響を与えています。そのなかで、ポルトガルの建築家エドゥアルド・ソウト・デ・モウラの芸術的知性と感覚は、私にとって建築のインスピレーションの源となっています。哲学者のマルティン・ハイデッガーの実存主義哲学は、私が物事を考えるうえで重要な基礎となっています。また家具デザイナーのポール・ケアホルムのの作品を見ていると、自身の家具デザインはもっとシンプルである必要があると感じますね。高名なデザイナー達の作品の背景にある考えを理解し、現代の私たちの生活をデザインすることは、私にとってとても楽しいことです。




——最近の主な活動内容を教えてください。

最近は内装の案件を1件納品しました。2階建てのカフェの内装をデザインするプロジェクトで、2階はギャラリーの回廊のような空間をつくり、満足のいく空間をつくりあげることができたと自負しています。他にはガラス棚のデザインやモックアップの製作も行っています。最小限のサポートと最低限の構造で固定するようディテールをつくりこんでいるところです。できるだけ早いところ完成させてローガンアトリエさんでもご紹介させていただきたいですね。

インテリアデザイン
インテリアデザイン ▲ 実際にインテリアデザインを手掛けたカフェの2階




——デザイナーとしてのこだわりであったり、大切にしているものを教えてください。

いい仲間、いいチームメンバー。自分一人でできることなんて何もありません。建築もインテリアデザインも各分野の専門家の助けを必要としますし、それは実際の製造においてはさらに重要になります。家具もまた、製品が完成するまでの間に何度も製造業者と頻繁に打ち合わせをします。そして製造工程での経験を通して、次はデザイン設計でその経験を活かすことができるようになります。一緒に成果を出すことができる優れたチームを持つことは私の大きな資産です。




——日本の皆さんにあなたのデザインに何を感じて貰いたいですか?

私は日本人の皆さまが潜在的にお持ちの繊細さが好きです。日本を訪れるたびに特に建築物の素晴らしさを感じます。繊細さは、atelier Oのデザイン哲学の中で重要な位置づけにあります。もちろん、この先も精進し、さらに高度なものにする必要があります。ですが、日本の消費者の皆さまがこの繊細さをatelier Oの作品の魅力として感じてくだされば幸いです。


——あなたにとってのデザイン美とは?またデザインするうえでのアプローチについて聞かせてください。

美的デザインというのは、その空間や物体を体験した人々がより研ぎ澄まされて美しくなるものだと考えます。それが空間の場合は、心地よく、気持ちよく、そして前向きに考えることができる場所です。だからこそ私自身は装飾的なデザインではなくミニマルなデザインを選んでいます。内装はあくまでも基礎であり、美しい家具や観葉植物などを際立たせるものです。もちろん素材の質感や感触も考慮しています。家具についても同様です。良い素材とシンプルなディテールが直感的に感じられ、あたかも恋人と一緒にいるような感覚を感じることが出来れば美的デザインだと思います。




——あなたのモットーをお聞かせください。

私は常に絶対的ではなく相対的で、バランスと調和について考えるようにしています。そうすることで人と世界(取り巻く環境)との関係性を理解するのに役立ちます。デザインも同じです。常に環境と調和を一番に考えています。




——韓国のデザインに一貫した特徴はありますか? あなたのデザインにも反映されていますか?

韓国のデザインは上品でシンプルだと思います。常に私たちを謙虚にし、私たちの周りの自然をより強調します。ただ悲しいことに、この傾向は現代まで継承されているとは思っていません。これには歴史的な背景があるかもしれませんが、韓国は最近劇的な進歩を遂げ、海外からのデザイントレンドなども入ってきています。そこには様々なデザインがあり、私はまさにこのあたりにいるデザイナーだと思っています。ただ一方で、未だに多くのデザイナーはまだ韓国のデザインに固執してしまっているようにも思います。この分野に関しては私自身ももっと色々と考えなければならないことです。

AO50table AO50table ▲ 左)AO50 tableの構造パーツ。組み立てには溶接は一切使用せず、全てネジ留めのみで完結。右)トップガラス越しにも見える幾何学的な構造体の美しさ *クリックで製品ページへ




——最後に日本の皆さんに一言あればお願いします。

ローガンアトリエを通して、日本の皆さまにatelier Oの作品をご紹介できてとても嬉しく思います。それと同時に、AO50テーブルに対する皆さんの反応が楽しみであり、また非常に興味があるところです。ぜひとも私たちの作品に多くの関心をお寄せください。






写真 Jihoon Oh
建築家/インテリアデザイナー/家具デザイナー
長年の夢だった建築事務所を開設後、2018年にオリジナルの家具ブランドを発表。
建築家としての経験を活かした細部にまでこだわったミニマルな家具デザインには定評あり。マルチな才能を活かし、現在は建築家としても活動する傍らで内装デザインや家具デザインも手掛ける。



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