Signature Designer of the Month | vol.3 | Joana Santos & Hugo Silva

ジョアナ・サントス ▲ ポルトガル発の家具ブランドDAMの設立者であるJoana Santos(左)とHugo Silva(右)

Signature Designer = LOGAN atelierのトレードマークとして、また一人の人間としても尊敬できるデザイナー個人をピックアップして皆さんにご紹介していく特集です。デザイナー/作り手の人となりを知り、普段お店には並ぶことのないデザイン細部に至るまでの想いを理解し、「ものづくり」への愛を感じて頂く事で、皆さんが少しでも彼らのデザインを長く愛用するきっかけの一助となるように始めた企画です。

新年1組目となるVol.3は、ポルトガル出身の『Joana Santos(ジョアナ・サントス)とHugo Silva(ヒューゴ・シルバ)』さんです。今回彼らをピックアップしたのは何と言ってもサステナビリティへの感度の高さと徹底したアプローチがあったからです。どの業界でもサステナビリティとコストの天秤に悩まされている企業は少なくない筈です。その中でもDAMはポルトガルらしく”Smile with us!”をモットーに、軸がブレずに如何に次世代に物語を紡いでいけるかを日々模索されています。その材料の産地含む厳選が故に、どうしてもお値段にも多少反映されてきてしまいますが、限りなくカスタマイズにこだわっているのも、如何にして皆さんのライフスタイルに合わせたデザイン設計で長くご愛用頂けるのかを考え抜いた結果です。

まさにこのSignature Designerを始めたきっかけにも繋がる、表面的なデザイン意匠だけではなく、是非皆さんには製品の裏に秘められた想いと、ここに至った背景を読み解き、彼らの製品から些細ななにかを感じて頂けたらとても嬉しいです。ご一読いただいた後にはDAM製品に対する見方が変わると思います。




——今回は3回目にして初めてソロでないstudioへのインタビューになります。恒例ですが、やはりまずはJoanaさんとHugoさんお二人について、そしてどの様な経緯でDAMを立ち上げられたのかを伺わせてください。

Joana(以降J):2人はAveiro大学で共にデザインを学んだ同窓生なんです。アヴェイロは“ポルトガルのヴェネツィア“とも呼ばれているとても美しい街なので是非日本の皆さんにも一度は訪れて頂きたい場所です。
Hugoとは在学中に幾つかのグループワークでも一緒に活動させてもらったのですが、その中でも、Junior enterprise(ジュニア エンタープライズ。社会経験を積むこと、起業家精神を養うことを目的として活動する学生主体のNPO団体。各々学んでいる事を活かし、主に地域に根付く中小ビジネスのコンサルティングを行う)での経験が今の私たちに大きな影響を与えていると思います。
卒業後には、私はグラフィックデザインの会社でブランディングやブランドコミュニケーションの仕事を、Hugoは大学に残りインタラクションデザイナーとして研究を続けていました。ですので二人ともデザインという共通事項は持ちつつも、全く異なる分野で働いていました。
DAMというブランドはそんな中で、何か別の事をしたい、自分たちの手で自分たちの製品づくりがしたいという強い想いから誕生しました。2013年にSerralves Museum主催で行われた『POPsコンテスト(Portuguese Original Products)』で家具部門で受賞したことが転機でしたね。その際に受賞した製品がビジネスとして商機がありましたので早速DAMのブランディングと市場参入が次の目的となりました。そして、同年9月にロンドンで催された『100% Design』の見本市で遂にDAMがお披露目されたのです。

現在は二人ともDAMブランド製品の創造的な開発に携わっています。私はグラフィック分野とクラフトワークに強みがあり、常に実用的なアプローチをとります。一方でHugoはスケッチブックを広げることすらせずに日常にインスピレーションを探しています。私たち二人が揃うことで初めて、色・形・技術・そして素材を通して感情的な要素を探求し、そして非凡なディテールと環境に優しい製品づくりをすることが出来るのです。




——ポルトガルのアヴェイロと言えば水路が美しい港町として日本でも有名ですね。近年はポルトガルという国を改めて再発見して国際的になにかと受賞されることが多かったのではないかなと思いますが、ポルトガルはどの様な国ですか?

▲ ワイナリーも点在するドウロ渓谷(左)。アヴェイロ旧駅舎の壁には「アズレージョ」というタイルデザインの装飾を見る事が出来ます(中上)

J:ヨーロッパを旅行されるのでしたら、絶対にポルトガルをお勧めします(笑)。仰る通りに近年はいろいろと国際的な賞を頂いていますが、まさにこれがポルトガルが最高に美しい国であることの裏付けとなっていますよね。世界の皆さんに評価いただけるのは本当に嬉しい限りです。
ここまで評価してもらえるのには、特に2つの要素があると思っています。それは、『住んでいる人たち』と『ドウロ渓谷』です。みんな偽りなく純粋で、住む町を訪れる観光客を家族だと思って接してくれますよ。ポルトガルには豊富なスキルとノウハウもあり、昔から変わらない集合的遺産も残っています。自然、たべもの、工芸品、語り継がれる物語、そしてポルトガルの文化もそうです。
私たちはスタジオをサンジョアンダマデイラに構えています。ここは、ポルトからわずか30 km、海岸から20 km、山から30 km、空港から40 kmの距離に位置しています。これに加えて、30 kmほど行った先には、世界で最初のワイン生産地の1つであるドウロ渓谷があります。この風景と遺産が世界で最高のワインを生み出し、私たちに日々の活力と創造力を与えてくれます。そして気分も良くなります(笑)。今お伝えしたすべてが、ポルトガルが特別な国であり、ポルトガルで生活する人々が違いを生むことが出来るのだと確信させてくれるものです。したがって、私たちの製品は私たちを取り巻く環境そのものを反映していると言えると思います。それはハンドメイドを尊重し、新しい技術と心構えを統合することに繋がっています。




——そんな素敵な国の、しかも最高の立地にスタジオを構えてらっしゃるとは知りませんでした。是非今度ワイナリーにも訪れてみたいです。休日は比較的ゆったりとした時間を過ごされているのでしょうか?

J:旅行、異文化コミュニケーション、それと美術館やデザイン展に訪れたりしてゆっくりと過ごすことが多いですかね。家族と一緒に過ごしたり、友人と夕食をとったりするのも好きですね。もちろんワインと一緒に。あとは、良い映画を鑑賞したり、テレビドラマをみることもリラックスに繋がっています。
HugoにとってはValentim Sofaに座りながら漫画アニメを観るのが週末の過ごし方みたいですよ。
Hugo(以降H):最高の一日の始まりですね。Joanaは午前中ずっとベッドで転がりながらリラックスしているみたいですよ(笑)。




——そんなお二人がデザイナーを目指すきっかけはなんだったのでしょうか。

J:芸術に絡んだ活動は幼少期から常に私のお気に入りの時間でした。学校がお休みの日にはよく絵を描いたり、ピアノを弾いていました。大学でどの分野に進もうか考えた時には消去法でデザイナーになろうと決めました。美術はとても好きでしたが、仕事としてではなくて趣味のままであって欲しかったですし、建築もあまり好きではありませんでしたから。今ではこの道を選択してよかったと心からそう思っています。

H:なにかこう、これという瞬間があったとすれば、それはデザイナーになるというのはどういう意味を持つのかについて理解したときでしょうか。私も小さいころから絵を描いたり、工作の時間が好きでしたが、ただ単にそれは楽しいという感情であったり、人となにかを共有することが好きなだけでそれ以上のことはありませんでした。ポルトガルではデザインに対しての意識が少し遅れていて比較的最近注目されてきた分野ですので当時はデザインという言葉の意味すら知りませんでしたから。ただ、この意味を学んだとき、それは自然な選択として、デザイナーを志すことを決めました。




——ベースは似ているようですが、ここに至るまでのプロセスが随分と違うのですね。そんな異なる才能が多くの素敵な作品を生み出しているわけですか。なるほど。因みにデザインアプローチなどはどなたかに影響を受けていらっしゃったりしますか?

J:インタビューの機会があると大抵同じ質問を受けるのですが、2名いらっしゃいます。同じAveiro大学卒の、Francisco Providência(フランシスコ・プロビデンシア)さんとCarlos Aguiar(カルロス・アギアル)さんです。
両名とも国内外での賞を受賞し国際市場でも認められていて、今やポルトガルデザインの歴史の一部ともいえます。彼らの立ち振る舞いやデザインに対する姿勢やアプローチ、そして詩的でシンプルなデザインソリューションは多くのポルトガルデザイナーの誇りであり、常に影響を与えてくれています。




——DAMの中でお二人の役割分担とかありますか?

J:二人ともDAMというブランドに専念して日々創作活動に勤しんでいますが、私は経理業務やブランドコミュニケーション戦略、それからカスタマーやLOGAN atelierのようなエージェンシーの窓口を担当していて、Hugoには生産者やサプライヤーとのパートナーシップを確立してもらったり、生産プロセスの責任者になってもらっています。




——なるほど。ではいよいよ核心をついていきたいと思いますが、普段DAMがデザインするうえで大切にしているものを教えてください。

J:サステナビリティは、DAMの製品開発と商品化の上で必要な条件です。次世代の人々が今の世代と変わりなく自然によってつくりだされた素材に触れ、感じ、文化を紡いでいけるようにしていく必要があります。環境を損なわずに上手に付き合いながらも天然資源を活用させてもらい、社会的に責任ある形で人々と協力していくため、サステナビリティは物質的および非物質的に経済発展にも直接関係していると考えています。
また、環境と地域経済の持続可能性に貢献するために、廃棄物を分離して再利用し、より多くの有機資源を選択することもルーチンの一部として大切にしています。

ですがやはり資本主義的な業界には危惧しています。なぜなら例え個々が最善を尽くしたとしても、利益を優先して市場を独占し、環境や社会の持続可能性を損なう企業が多く見受けられるからです。彼らなしでは変化を構築することは難しいです。ですので私たちはお客様のためだけでなく、パートナー企業含め業界が変わっていけるよう、DAM製品やブランディングで物語を紡ぐことでこれからも働きかけていきます。

写真 写真 ▲ DAMのスタジオ内の写真。展示ルームも兼ねておりDAM製品が並ぶ。


——日本の皆さんには具体的にお二人のデザインを通して何を感じて貰いたいですか?

J:日本の皆さんには、DAMの製品一つ一つの持つ物語を見つけてほしいなと思います。それぞれの物語はDAMを他社製品と差別化するには十分なものになっています。DAMでは、家族や友人と共有している本や映画の様に、今後も次世代に紡いでいきたいと願う物語から製品が生まれます。私たちはDAMの製品が皆さんにとって話し合いの話題となったり、なにかを感じるきっかけとなることを望んでいます。私たちは、製品が反省、議論、インスピレーションの瞬間になることを望んでいます。 私たちは彼らが無関心ではなく、一人一人にポジティブな記憶を引き起こすことを望んでいます。

写真 写真 ▲ ロッキングチェアのGago(左)と愛らしい表情のMário(右) *クリックで製品ページへ




——デザイン美学みたいなものがあれば教えて頂けますか。特に素材には随所にこだわりが見られますが、その辺りも含め。

J:DAMの製品そのものが、デザイン、工芸、そして産業の在り方を伝えてくれます。この子たちは主体的に物語を語り、感情であったりクオリティ・オブ・ライフに直接訴えかけてきます。可能な限りカスタマイズができるよう、また品質管理の目的もありポルトガルで生産しています。ライフスタイルコーディネーションにも向いていて、トータルコーディネートする事で部屋に変化をもたらして、ホテル含む商業施設、リビングなどの自宅、そしてもちろんオフィスも、訪れる人々に強い印象を与えてくれます。
クラフトテクニックは、DAMの創造的で生産的なプロセスの一部です。素材、工程、そして職人といった財産もすべてインスピレーションの源です。

素材は特別に生産された異なる天然素材を用い、組み合わせる事で差別化を図っています。今は石材、コルク、木材、藁、そしてファブリックと多様な素材を取り入れていますが最近はその保温性と防音の観点からも市場ニーズの高まっているコルクに注目しています。このコルクの生産及び採取のプロセスはまさに持続可能で環境に優しいです。コルクを集めるために木を切る必要がないんですよ、樹皮を収穫するだけですので、かえって樹木自体が若返る事も出来るんです。

▲ 左のコルクガシの樹木からコルクが出来るまでの過程




——以前コルクに関するDAMの投稿をLOGANのSNSでもシェアさせて頂いたことがあります。9年に1度という頻度でコルクガシという樹木の樹皮を採取して生産されているのでしたよね。ポルトガルのコルク生産量が世界の50%を占めているというお話もびっくりしましたね。そんなお二人がデザインするうえで常に目標や指針とされているモットーを是非教えてください。

J:“Smile with us!”
人生は短いです。退屈な使い捨て製品に時間を浪費している暇はないです。モノではなくて、そのスペースに価値を見出してくれたら嬉しいです。




——さきほどHugoさんのお話の中でポルトガルのデザイン産業は始まったばかりだとありましたが、既にポルトガルらしさみたいなものは確立してきているのでしょうか?それともまだまだこれからですか?

J:ポルトガルのデザインには非常に明確な伝統はないんですよ。ポルトガルでは、デザインという分野の確立が最近で、職業として評価されてこなかったことが理由ではないかと思います。民間でも公営でも、デザインの規律とその実践を実際のプロジェクトに落とし込むに至るには程遠いでしょうね。特に私たちの業界では、ブランドや製品のクリエーターというよりもプロデューサーとして認識されていることが多いです。
ただ次世代には素晴らしい才能が育っています。例えばデザイナーのRui Alves。彼の作品は国際的な賞も受賞していて、2014年には世界中の若手デザイナーをおさえて『New Talent Award」も受賞しています。シンプルなデザインアプローチとユーモアの組み合わせ、素材選定と伝統的な生産プロセスを尊重しているところなんかは、彼をうまく定義できているのではないでしょうか。




——最後になりますが、新製品を出されるとのことでしたので日本の皆さんに少しだけ共有いただけないでしょうか。

J:では新製品のAliceについて少しだけ。 大工さんからバーテンダー、司書さんから観光客まで、誰もがアリスの事を賞賛します。結局のところ、椅子は単なる椅子では留まりません。時間の経過を恐れることなく、Aliceは軽くてエレガントな象徴的な椅子です。建築的なインスピレーションから、Aliceは姿勢よく縦にすらっとデザインされています。シンプルで軽量にもかかわらず、Aliceは洗練されたポルトガルらしい高潔さを得る方法を知っていて、レストラン、オフィス、ホテル、学校、ダイニング、そして待合室などのありとあらゆるスペースに理想的にマッチします。それぞれの場所で、各アリスはゴシップの物語を持っています。






写真 Joana Santos(左)とHugo Silva(右)
家具・プロダクトデザイナー
ポルトガル出身。ポルトガルの新しいデザイン文化を牽引するサステナブルブランドのDAMを設立。
“Smile with us!”をモットーに、いかに次世代へ大切な天然資源を引き継ぐかを徹底して探求。製品ごとに紡がれる詩的なコンセプトが使い手を物語へと引き込みます。



DAMのデザインはこちら >>
Signature of the Month 過去のアーカイブはこちら >>